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消えてしまった夢は 君の所為じゃない 魔法は無くしたけど もうおやすみ
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一本目、そのうち差し変えます。
というかびっくりしたけどケイアキとか2007年に書いたやつなんですね。
4年も前だもんそりゃ気に入らないわな…

もともと二本だったものを一本にしました。
ちょっと長い?かな?普通かな。

自分が物書きとして成長した気は全くしませんが、
少し世の中の汚い面に(世の中というか人間の?)触れたことと、
絵や小説や音楽、たくさんの作品を目にしてきて、
4年間で若干感覚が変わった部分はあると思います。

人間としてはさほど成長してないです。
むしろ退化してるかもしれんねw

追記でぽいっと置いておきます。
後ほどサイトにも上げておきます、忘れなければ。

BGMの件ですが色々悩んだ末、
現在ついているものに関してはそのままの方向で行くことにしました。
シリーズ物を除き、今後アップする小説にBGMを付けることはおそらくありません。

あとは、携帯サイトを作る予定です。
既存の小説を載せていくだけです。更新も同時進行かと。

ただ私全く携帯サイトの知識が無く、
サーバーすら調べていない状態なので、時間がかかるかもしれません。
早めにできたらいいなーとは思ってます。






もういちど。
もういちどだけでいい。
五分でも一分でも、一秒でもいい。

あいたい。

ただ、それだけ。
 

愛し

目が覚めた時、
俺はもうあいつには、姿が見えなくなっていた

アキラの前に横たわっている俺の身体と、
ソレを抱きしめている冷えて色の悪くなっている腕。
と、細い指。

濁ったきたない血を洗い流すように流れる水滴。
そこでやっと、自分が死んだ事に気付く。
死んでそれでも、この世界とアキラにしがみ付いているのだと。

アキラは、何も言わないでただ、俺の髪を、梳いている。
アキラは指以外を動かさず、虚ろな目をして。

ごめんね アキラ

そう伝えたいのに、今の俺ではその言葉を届けられなくて、
こんなに好きで好きで堪らないのにこんなに近くにいるのに
アキラの隣にいるのに。

それは今までと何も変わらないのにね

「・・・アキラ、」

どうして とどかないのだろう
どうして こんなふうになってしまったのだろう

「アキラ・・・きこえ、る?」

アキラはただ、俺の身体を眺めていた。
それはもう俺じゃないのだと、
ほんとうの俺はここにいるのだと伝えたかった。

でも無理だった。

どこかが痛くて、張り裂けそうだ
じわ、と溢れた涙が、頬を伝っていくような感覚がした。

「俺、間違ってた・・・アキラを、傷つけた・・・。」

でも。

「でも、それでも、俺は、アキラの事がっ・・・」

すきだよ。

届かなくても触れられなくても
アキラを後ろから抱きしめて、言った。

でもアキラは、俺がここにいるなんて知らないから
何も知らないから、俺を抱きしめて俯いていて

ケイスケ、そう小さく呟いたアキラの声が、
雨の音に紛れて消えた。

 

どれだけの時間をこうしているのか。
あれからずっと、俺は傍にいるのに。傍にいたのに。

この身体になってから、暑さや寒さや痛みを感じなくなった。
生きていた頃、あんなにも苦しく鬱陶しかった感覚はもう欠片も残っていない。
まるでフワフワと浮いているようで、事実、地面の感触すら無いのだ。

意識だけが取り残されたかのようだった。
俺の身体だったものがどうなったのかは分からない。
もう腐り果てているかもしれないし、焼却されたのかもしれない。

俺の前の前で、
アキラは自身を抱きしめるように丸まって
廃ビルの亀裂が入った壁に凭れていた。

外は雨だ。いくつもの数えきれない割れ目や隙間から、
冷たい空気が入り込んでくる音がする。

探せばもっとマシな建物もあるだろうに。
自身の体を心配しないのは今に始まった事ではない。

温めてやりたいと思う。
だけどそれは、もう二度と叶わない行為だった。

だから、こうやって傍で見守る事しか出来なかった。

虚ろな目。俺のせいで。
手も足も、あの時から比べれば筋肉が落ちたと思う。

まともに食事も摂らず一日中ぼうっとしているのは、傍で見ていたから知っている。
時々、その綺麗な、大好きな色をした瞳が水分を含むのも。

何度も謝りたいと、早く俺から解放してあげたいと思った。
ただ、それを伝える術が無い。

もしかしたら俺は、アキラに出会わなければよかったのかもしれない。
出会わなければあんな死に方はしなかっただろうとか、
もっと長生きできたかもしれないとか、そんな事はどうでもよかった。

俺がいなければ、アキラがこんなに苦しむ事は無かったのかもと。

ただ、認められたかっただけ。
ただ、気持ちを伝えたかっただけ。
ただ、心配だっただけ。

「それだけ」だったのかは今ではわからない。
けれどこうなったのは、アキラが心配で。好きだったから。
それだけは、ほんとうだと言える。

考えてもどうしようもない事だ。
後悔した所で、この状況は変わりっこない。

ごめん。

アキラが一番、嫌いな言葉。
それを、なんとなく口にする。

今まで幾度謝ったのだろう。
数え切れないほど謝ったはずなのに、
ひとつひとつが一体何に対しての謝罪だったのかまでは思い出せなかった。

それこそがアキラの「嫌い」に繋がった事は確実で。
生きている時は、それに気付けなかった。

それが一番の原因だったのかもしれない、と。
これも、この姿になってから何度考えたことか分からない。


ガタン、と割れた窓硝子が音を立てて揺れた。
風が強くなってきている。

意味を為していない窓硝子の間から
風に煽られて斜めに降り注いでいる雨が入り込んで、
コンクリートの冷たい床をさらに冷やしていた。

アキラは大丈夫なのだろうか、と視線を戻すと、
フードを被り、さらに手で頭を押さえていた。

やっぱり具合が悪かったのだと心配になる。が、どうすることも出来ない。
休む場所を移して欲しい、そう思いながらアキラの前に立って、
それから床に座り込む。地面の感覚は、矢張り感じられなかった。

下から覗きこんで、表情を確認しようとすると
アキラが、何かを呟いたのに気付いた。

―――――何と言っているのだろうか。
声があまりにも小さすぎて、聴き取ることが出来ない。

顔を覗き込む様にして、耳を傾けて。
そして偶然聞き取った言葉。

 

 

「どうして、お前はずっとそこにいるんだ」

 

 

それは間違いなく、自分に対しての言葉だった。
あまりに衝撃的すぎて、思考が追い付かない。

「あき、ら・・・?」

そう言った後に俺を見るアキラの瞳は、
間違いなく「俺」を見ていた。

――――そんな、まさか。
見えていただなんて。

そんな事、

「いつまでここにいるつもり、だ・・・」


「・・・・・・アキラ、俺の事、見えて・・・?」


そう尋ねると、アキラは小さく頷いてから、
ぽつりぽつりと言葉を落とし始めた。

あの雨の日。
俺が死んだ数日後から、ずっと見えていたのだと。

しかし俺がそれを知ってしまえば、恐らくずっとここに留まり続けるだろう。
そう考えたアキラは、ずっと見えないフリをし続けていたのだと。

それ程に気を使わせていながら、
アキラには自分は見えていないと思い続けてきた自分が、
いかに愚かだったのかを知った。

死んだってほら、やっぱり迷惑掛けている。

そんな自分が何より嫌いのはずなのに、
アキラに自分が見える、
その事実を素直に嬉しいと感じている自分がいる。

「・・・その、俺、心配で。」

何が、と声に出さないまでも、アキラの口はそう語る。

「俺の所為で、そうやって眠れないでいる事とか、」

あまり物を食べない事とか、

こうやって寒い場所にずっといる事とか、

あとは・・・

「・・・ねぇアキラ、」

やつれた表情で、睨むように俺を見て。
その口が動く。

「・・・何だ」

その声を聴きながら、立ち上がって窓の方に身体を向けた。
アキラに背を向けて、体に当たりもしない雨が降り続けているのを見て。

「俺、別に死んだのがアキラの所為だなんて思ってないよ?」

「・・・っ」

アキラが組んだ腕に顔を埋めるのが、見なくても判った。

「俺が死んだの、自分の所為だって思ってるのかもしれないけど。
俺が死んだのは、アキラの所為でも何でもないよ。
アキラに認められたいって気持ちで・・・ラインに手を出したのは・・・
それは事実だけど――――弱かったんだ。
麻薬なんかに負けた。それ位、弱かったんだ・・・」

あの日言えなかった言葉。
死んでから言うなんて卑怯だって、思われるかもしれない。

「でも、麻薬なんかでアキラに認められても意味がないよな・・・
アキラを・・・殺してしまわなくて、本当に良かったとも思うよ。
・・・あの時アキラを殺して俺だけが生き延びていたら・・・きっと耐えられなかった」

だから、

「俺、アキラより先に死ねて幸せだよ」

「・・・なんで・・・」

「だって、俺の知らない所にアキラが先にいっちゃったら、不安だろ?
どんな所にいったのかとか、何があるのかとか、元気にしてるか、とか」

馬鹿だろう、と吐き捨てる様にアキラは言ったけれど、俺はいつも心配だったよ。

いつもいつも俺より先にどこかにいってしまうから。
トシマに来る時だってそうだ。

どんな所かわからないところに大好きな人が行ってしまうなんて、
心配するにきまってる。

「だから、先にいって色々見てるからさ」


ゆっくり、おいでよ。


そう、言った瞬間に顔を伏せていたアキラが顔を上げた。

「お前、馬鹿じゃないのか。俺が先に死んだら不安になるだろって・・・
そんなの、俺だって同じだ・・・馬鹿・・・人のこと・・・少しは、考え・・・っ」

そう言いながら、アキラはぽたりぽたりとその瞳から雫を零した。
俺は吃驚して、苦笑しながら傍に寄る。

「・・・何で泣くの?」

触れられないけれど、思わず手を伸ばして、涙を拭うように手を動かした。
アキラの頬に触れた感触は無い。
俺の指先を、ただただその雫が通り過ぎていくだけ。

アキラはそれを茫然と見つめて、そしてまた泣いた。
俺がもう、アキラとは違う存在であると認識したのか、
大きく見開かれた瞳から、また涙が零れた。

「・・・もう、会えないのか、お前に」

触れないんだな、そう言いながら、アキラが少しだけ、寂しそうに笑う。
伸ばされたアキラの指先は、俺の身体をすり抜けた。
アキラのあたたかさも、感触も、もう分からない。
けれども、そうせずにはいられなかった。

「・・・俺は、アキラのこと忘れないよ」

うん、とアキラが頷く。

「俺も、忘れない・・・絶対」

もしあの雨の日、俺が死ななかったら。
あの後、仲直りできていたら、俺たちはずっと一緒にいられたかもしれない。
けれどそれはもう、ただの夢、幻想でしかない。

「・・・じゃあ、きっと・・・会えるよ。・・・会いにきて、待ってるから・・・」

そう言って、アキラの胸のあたりにそっと手をあてた。

「アキラが俺のことを忘れない限り、俺はアキラの中にいるよ・・・ずっと、」

だから、アキラの目を通して、この世界を見せて。
もう、辛そうな顔をして泣かないでよ。

アキラは俺を見て、こくりと頷いた。

「・・・そんなに泣かれたら、心配で傍から離れられないよ?」

そう言うと、アキラがむっとした顔をした。

「・・・お前、性格悪くなったな」

そう言われて、二人で笑った。
生きているころみたいに、ケンカした後みたいに。
アキラの笑った顔。泣いている顔より、ずっと綺麗。


そうしているうちに、雨があがった。
珍しく、綺麗に晴れた空が覗いている。

「・・・アキラ」

もう、伝えるべきことは全て、アキラに伝えたはずだ。
きっとアキラは、これから前を向いて、振り返らずに生きていく。

たとえ、触れなくても。感触が無くても。それでもいい。
そう思いながら、アキラの唇を塞いだ。
息苦しさも、何も与えられないのが悲しいけれど、
それは、向こうで会った時に与えられればいい。

だから、いまは形だけ。触れるように一瞬だけ。

 

 

 


「元気で、ね」

 

 

 


穏やかな声で、小さく返事が聞こえて。
俺がこの世界で最後に見たのは、
空から差し込んだ柔らかい光と、光に照らされた、アキラの瞳から零れた涙だった。

とても、きれい。

 


I was here to tell you why
     You were here to tell me why

 

君に出会えただけで幸せでした。
君を好きになって良かった。

先にこちらへ来た俺が君のために出来ることは、
綺麗な場所や楽しい事を見つけること、それくらい。

君がこちらへ来るまで、きっとまだまだかかるでしょう。

だからそれまでの間、沢山の場所を見て、
そして君がこちらへ来た時、手を繋いでひとつずつ案内するから。
何も心配しなくていいから、俺がいなくなった後の話を、たくさん聞かせてね。

もし二度と会えなくても俺はアキラを、

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